「歯列矯正をやらなきゃよかった」と後悔する声を耳にすると、不安を感じることでしょう。
歯列矯正には多くの人が満足している一方で、後悔する人もいます。
本記事では、歯科矯正をやらなきゃよかったと感じる理由や、後悔しないための方法・対処法について詳しく紹介します。
歯列矯正をやらなきゃよかったと感じた理由
歯列矯正をやらなきゃよかったと感じた理由を以下に紹介します。
- 矯正前の歯並びに戻ってしまった
- 矯正をして歯が黄色く変色した
- 矯正に時間がかかった
- 抜歯矯正で老けたように感じた
- 歯を削られた
それでは詳しく見ていきましょう。
矯正前の歯並びに戻ってしまった
矯正治療後は何もせずに美しい歯並びを維持することはできません。
正しい歯並びを保つためには、リテーナーの装着が不可欠です。
リテーナーを装着せずに「再発」して歯が再び動く人もいます。
その結果、再度矯正治療が必要になり、その出費から「矯正治療を受けなければよかった」と後悔するのです。
矯正によって動かしたばかりの歯は、しっかりと固定されているように見えますが、実際はまだ不安定です。
後戻りとは、矯正治療後に歯がしっかりと固定されておらず、治療前の位置に戻ることを指します。
矯正治療を受けている方は、歯並びや治療期間に関係なく再発する可能性があるため、治療後は状態が安定するまで歯科医院で定期検診を受ける必要があります。
矯正治療では歯を動かすプロセスも重要ですが、矯正装置を取り外した後の歯の後戻りを防ぐことも非常に重要です。
重要なのは保定期間
矯正治療を受けた後、美しい笑顔を長く保つにはどうすれば良いでしょうか。
実は矯正治療には、歯を移動させる「動的矯正」とその成果を維持する「静的矯正」という二つの段階が存在します。
特に、装置を取り外した後に迎える静的矯正期間は、未来の笑顔を守る重要な時期と言えるでしょう。
この期間中、歯・周囲の組織・顎がまだ不安定であり、歯が動きやすい状態になっています。
そこで活躍するのが、「リテーナー」と呼ばれる装置です。
このリテーナーによって、維持したい歯の位置を保ち続けることができるのですが、その具体的な種類と機能について、これから以下に紹介していきます。
- フィックスドリテーナー
- ホーレータイプリテーナー・ラップアラウンドリテーナー
- クリアリテーナー
詳しく見ていきましょう。
1.フィックスドリテーナー
矯正治療を終えたばかりの方にとって、フィックスドリテーナーは歯の位置を維持する強い味方となります。
フィックスドリテーナーは、その名前の通り、固定式のリテーナーです。
歯の裏側に細い針金を接着して固定し、犬歯から反対側の犬歯までの範囲をカバーします。
抜歯矯正の場合には、前から4番目の小臼歯までを針金で固定することもあります。
初めは違和感を感じるかもしれませんが、慣れてくると通常通りの生活ができ、取り外しも不要です。
自己管理は歯ブラシのみで済むため、比較的取り扱いが楽なリテーナーです。
2.ホーレータイプリテーナー・ラップアラウンドリテーナー
ホーレータイプリテーナー・ラップアラウンドリテーナーは、多くの海外製映画やドラマに登場し、視聴者の目をひいています。
それは、取り外しが可能で日常生活がしやすいです。
プラスチック材料と微細な金属ワイヤーが使用され、非常に独特で実用的な設計が施されています。
歯の裏面だけではなく、表面にも適応する形状でデザインされており、歯列全体を均等に支えることが目的です。
これらのリテーナーの大きな利点は、その機能性にあります。
矯正効果の持続性という機能面では、通常固定式リテーナーの方が取り外し可能な型より優れていますが、これらホーレータイプリテーナー・ラップアラウンドリテーナーは、固定式に劣らず良好な持続性を発揮します。
患者本人が容易に取り外し、清掃ができるため、衛生面での利便性も高いと言えるでしょう。
3.クリアリテーナー
透明なマウスピースのクリアリテーナーは、現代の矯正治療において非常に重要な役割を果たしています。
その最大の特長は、透明で装着していてもほとんど目立たないことです。
このため、社会生活を送る多くの人にとって、外見を気にすることなく、治療を続けることができます。
また、このリテーナーは歯に密着する設計が施されているため、快適な装着感を提供し、長時間の使用でも違和感が少ないです。
快適性と目立たない外見を両立させたクリアリテーナーですが、欠点もあります。
それは、食事や歯を磨く際には、リテーナーを取り外す必要がある点です。
リテーナーの取り外しが頻繁になると、紛失や破損のリスクも増えます。
後戻りの原因
美しい歯並びを守るため、矯正治療を受ける人々は多いですが、治療後に歯並びが再び乱れる「後戻り」の問題に直面する方が少なくありません。
では、一体なぜ後戻りは発生して、また、その予防策には何があるのでしょうか。
リテーナーの装着不足
後戻りを防ぐキーポイントの一つは、矯正治療後にリテーナーの装着厳守です。
リテーナーは、歯が新しい位置にしっかりと固定されるまで支えます。
しかし、このリテーナーが正確に、かつ継続して使用されていない場合には、歯は元の位置へと戻ろうとする力に負けてしまいます。
歯磨きや食事の時間以外は基本的にリテーナーを装着しなければなりません。
特に初期の数ヶ月は、歯の位置がまだ不安定なため、リテーナーの役割が特に重要になります。
治療終了後、歯科医師は定期的に歯の状態をチェックし、リテーナーの装着時間を少しずつ調整していきます。
この段階的な調整によって、最終的にはリテーナーなしでも歯の安定を保てるようになるのです。
しかし、頻繁に自己判断で装着時間を変えたり、装着を怠ったりすると、後戻りのリスクが格段に上がってしまうでしょう。
口腔習癖
歯の安定に必要なのは、単にリテーナーの使用だけではありません。
口の中の筋肉、特に舌や唇、頬の筋肉がどのように機能しているかも、歯並びに大きく影響するでしょう。
例えば、口呼吸や舌の前方への押し付け、頬を常に噛む癖などは、歯に不自然な圧力をかけ、歯並びが乱れる原因になり得ます。
矯正治療では、微弱な力を数十グラム程度かけて徐々に歯を動かしています。
しかし、最大で100〜500グラム程度ある舌や唇の強い力が継続的に歯に加わると、歯が動いて後戻りの原因になってしまうのです。
歯の喪失と歯周病
歯並びを維持するためには、歯や歯槽骨の健康が不可欠です。
虫歯や歯周病が原因で歯を失うと、その欠損部分に隣の歯が移動することで、全体のバランスが崩れ、後戻りが発生する原因となります。
したがって、定期的な歯科検診で口内の健康を守り、適切な口内衛生を維持することが重要です。
治療方針のミス
治療方針の誤りも後戻りの原因になります。
例えば、無理な非抜歯治療や、適切ではない噛み合わせの調整、保定方法の問題等です。
矯正治療は複雑で専門性が高いため、経験と技術を備えた医師のもとで治療を進めることが、後戻りを防ぐためには不可欠です。
矯正治療後の美しい歯並びを長く保つためには、リテーナーの正しい使用、口腔習癖の改善、歯と歯周の健康維持、信頼できる医師による適切な治療計画の遵守が極めて重要と言えます。
矯正をして歯が黄色く変色した
矯正を経験した多くの人が、治療後に見舞われる問題の一つに、歯の黄ばみが挙げられます。
特に、ワイヤー治療や裏側矯正など、長期間にわたって矯正器具を身につけている人にとって、この問題はさらに顕著です。
これらの治療法では、矯正器具が常時歯に固定されているため、歯みがきが難しくなり、黄ばみが生じやすくなるのです。
しかし、重要な点は、歯の黄ばみが直接的に矯正治療が原因ではない点です。
黄ばみの発生には、日々のオーラルケアの質や、食生活、喫煙の有無など、生活習慣全体が大きく関与しています。
歯磨きが不十分であったり、着色を促す食品を頻繁に食べていると、矯正治療をしていなくても黄色く変色します。
矯正器具がついたままの状態で生活していると、器具が固定されている部分の歯は、その色が変わることがない一方で、器具が付いてない歯の部分は食品の色素やプラークに晒され続けるため、黄ばんでしまいます。
矯正に時間がかかった
矯正治療は通常、数か月から数年にわたる長期治療が必要ですが、その内容は個々の状況によって異なります。
矯正治療を始めてから「時間がかかった」「こんなにかかるならやらなかったらよかった」と後悔することがあります。
例えばワイヤー矯正であれば定期的に通院してワイヤーを調整しなければなりません。
医師の指示通りに通院できない場合、ガイドワイヤーの調整が予定通りに行えず、治療計画がずれる可能性があります。
マウスピース矯正の場合、1日20時間以上装着することが非常に重要です。
たとえ定期的に通院できたとしても、毎日装置を装着する時間が十分に取れないと、治療計画が逸脱してしまう可能性があります。
また、矯正治療前のメインテナンス期間がよくわからず、意外と時間がかかると思う方もいます。
メインテナンス期間とは、矯正治療後に歯並びを維持するためにリテーナーを装着する期間のことです。
リテーナーの装着期間は矯正治療と同じ期間とし、保定期間を過ぎた後もできるだけ長く(睡眠中のみなど)装着するのが理想です。
このことを理解せずに矯正治療を始めると、「まだ矯正装置が必要だったとは知らなかった」となってしまう可能性があります。
抜歯矯正で老けたように感じた
歯列矯正で失敗して老け顔になる原因は以下の4つです。
- 抜歯を行った
- 噛み合わせの治療を行った
- 歯列矯正中に痩せた
- 表情筋が衰えた
それぞれくわしく見ていきましょう。
①抜歯を行った
抜歯矯正は、出っ歯や八重歯のように部分的に皮膚が張り出している場合に適している治療法の一つです。
問題の歯のスペースを確保する目的で、一部の歯を抜くことがあります。
しかし、この抜歯により生じる空間が皮膚に影響を及ぼし、結果として、顔の肌がたるんで見えることがあります。
皮膚がたるむと、顔の輪郭に影が生じ、顔全体が老けて見える印象を受けることがしばしばあります。
皮膚のたるみを恐れて過度に非抜歯矯正を選ぶのも適切ではありません。
治療の方針を決定するにあたり、歯科医師と十分にコミュニケーションを取り、自身の状況に合った最適な治療法を選択することが重要です。
②噛み合わせの治療を行った
歯並びの乱れが原因で不正咬合の状態が続くと、咬筋(顎の筋肉)に過剰な負担がかかり、エラ張りが起こることがあります。
この状態に対して、噛み合わせの治療を行うことで不正咬合が改善され、咬筋への負担が軽減され、エラ張りも改善されることがあります。
この過程によって、面長になったり、顔が老けたような状態になるかもしれません。
③歯列矯正中に痩せた
矯正治療中は、矯正装置による圧迫により食事が困難になり、食事量が減り、体重が減少する場合があります。
さらに、体重が減ると頬が痩せて老けて見えるでしょう。
矯正治療中の痛みがひどい場合、「食欲はあるけど噛むと痛いし圧迫感がある」という方をさけもおりますし、本人もおやつを食べる量が減るので、自然と食べる量も減ります。
ワイヤー矯正装着中の食事のストレスを軽減するには、硬い食べ物を避けて噛みやすい物を食べることが大切です。
④表情筋が衰えた
矯正治療中は、矯正装置の不快感によりうまく噛めなくなったり、顔の筋肉が衰えたりすることがあります。
表情筋とは「肌を内側から支える根本的な役割を果たす」筋肉です。
表情筋が衰えると顔がしぼんでしまい、老けた印象を与えてしまいます。
ただし、顔の筋肉を鍛えすぎないように注意してください。
過度の運動は、ほうれい線、シワ、顔のたるみなど、見た目年齢に影響を与える要因となります。
また、皮下組織(皮膚)が伸びたり縮んだりすることでダメージを受ける場合があります。
顔の筋肉を鍛える方法について皮膚科医の指導を受けることが重要です。
歯を削られた
歯を削りすぎると、隙間が大きくなります。
矯正治療では以下の目的で状況に応じて研磨を行います。
- 歯が動くスペースを確保する
- 噛み合わせを調整する
- 歯並びを安定させる
ただし、削りすぎると歯と歯の間の隙間を埋めるために歯を大きく動かす必要があり、矯正治療が長くなる可能性があります。
歯列矯正をやめた方がいい・必要ない人の特徴
歯列矯正をやめた方がいい・必要ない人の特徴を以下に説明します。
- 噛み合わせが正しい状態になっている
- 顔全体のバランスが良い
- 本人が気にしていない
- 長期的な通院が難しい
- 虫歯や歯周病がある
それでは詳しく見ていきましょう。
噛み合わせが正しい状態になっている
歯列矯正を受けることで改善されるのは、噛み合わせです。
正しい噛み合わせを自覚するのは難しいことですが、歯全体を使ってそしゃくできている場合は基本的に問題ありません。
しかし、一部の歯だけを使っている場合は、噛み合わせが悪い可能性があります。
噛み合わせは食事の楽しさや歯への負担に大きく影響を及ぼします。
そのため、噛み合わせが悪い場合は歯列矯正を検討してみましょう。
ただし、気にならない場合は無理に治療を行う必要はありません。
顔全体のバランスが良い
歯並びが顔のバランスに影響を与えておらず、外見に大きな不満がない場合、矯正治療は必要ありません。
自分の外見に対する満足度を考慮しましょう。
本人が気にしていない
歯並びを改善するために歯列矯正を検討する方の多くは、外見に気を使っています。
歯並びが極端に悪いと写真映りが悪くなったり、口を開けるのを避けたりすることがあります。
このため歯列矯正を希望する方は多いですが、逆に歯並びが悪くても外見が気にならない場合、歯列矯正は必要ないでしょう。
ただし、外見に気を使わないからといって、口腔内の健康が害される場合は、歯列矯正を検討するべきです。
歯並びが悪いと、見た目だけでなく、かみ合わせやそしゃくにも影響が出ます。
また、歯ブラシで磨き残しが起きやすくなり、虫歯や歯周病の原因なるため注意が必要です。
長期的な通院が難しい
引っ越しや留学、出張などで、矯正治療を途中で中断することはあるでしょう。
また、転勤が多い方は矯正治療を躊躇するかもしれません。
矯正治療の治療期間は症状により個人差がありますが、一般的には2〜3年半です。
奥歯を含めた全体矯正の場合は1〜3年程度、前歯のみの部分矯正の場合は2か月~1年半程度の治療期間がかかります。
治療期間中は定期的に歯科医院に通い、総合的な歯科ケアを維持する必要があります。
通院の継続が難しい方は、歯列矯正は必要ないでしょう。
虫歯や歯周病がある
矯正治療を始める前から進行した虫歯や歯周病は、そのまま放置してしまうと治療計画全体に悪影響を与えてしまう可能性があります。
深刻な状態の虫歯があると、矯正治療の障害となるので、治療の前段階で虫歯を完治させることが大切です。
なぜなら、虫歯や歯周病治療を行わずに矯正治療を開始した場合、治療中にさらに悪化する事態が発生し、矯正治療を一時中断し、対応に追われることになるからです。
当初計画していた治療スケジュールが大幅に狂い、治療期間が予想以上に延長するリスクを抱え込むことになります。
虫歯が小さい場合は、通常、虫歯を除去して詰め物をするだけですぐに歯列矯正を行うことが可能です。
深刻な虫歯や歯周病がある方は、歯列矯正をせず治療を優先しましょう。
歯列矯正が必要なレベルの人の特徴
歯列矯正が必要なレベルの人の特徴を以下に説明します。
- 出っ歯や受け口で歯並びが気になる
- 噛み合わせが悪い
- 顎のバランスが悪い
- 虫歯になりやすい人
それでは詳しく見ていきましょう。
出っ歯や受け口で歯並びが気になる
出っ歯や受け口で自分の歯の外観について気になる患者さんが増えています。
歯並びは完全に遺伝で決まると悲観的に思っている人も多いかもしれません。
しかし、生活環境も歯並びの乱れに大きく影響します。
食生活などの生活環境を改善することができるため、子供の頃から予防策を講じることで改善する可能性があります。
凸凹した歯のせいで、多くの人が自分に自信を失い、笑顔が減り、写真を撮る勇気さえなくなります。
歯並びを整えると前向きな性格になり、会話も楽しくなるでしょう。
子供の頃から予防
不正咬合は、口腔内の異常を指し、具体的には、上下の歯の間でかみ合わせが悪い、歯並びに問題があるという状態をさします。
このような状況には、「出っ歯」や「すきっ歯」といった典型的な症状が含まれますが、これらは不正咬合のさまざまな症状の一部に過ぎません。
不正咬合が発生する背景には、多様な原因が存在しており、乳幼児期の不適切な習慣(例えば、指しゃぶりや長時間の哺乳瓶利用など)が、後の歯並びや噛み合わせの問題に影響を及ぼすことも珍しくありません。
これらの習慣は、早期に改善するべきであることが多いため、親が積極的に介入し、適切な矯正を促すことが重要です。
不正咬合の原因を掘り下げると、歯自体の生え方や歯を支える土台となる歯茎の骨(歯槽骨)の位置に異常があること、さらには、歯槽骨自体の未発達など、複雑な要素が絡み合っています。
不正咬合がなぜ発生するのか、その原因は大きく分けて2つに分類されます。
先天的な要素による「遺伝的要因」と、後天的な生活習慣や健康状態に根ざした「環境要因」です。
遺伝的要因による不正咬合は、親から子へと遺伝する形質の影響であることが多く、家族内で類似した口腔の問題が見られることがあります。
一方、環境要因による不正咬合は、前述した乳幼児期の悪い習慣や、不適切な食生活、さらには顎への外傷など、様々な後天的な要素が影響して発生します。
噛み合わせが悪い
「麺類は前歯で噛めないので奥歯で噛んでいます。」
「私が話していると、『つばが飛んでくる』とよく言われます。」
これらは歯並びが原因で起こることもあります。
たとえば、奥歯は噛み合っているのに前歯が噛み合わない(開咬)場合、前歯で噛むことが難しくなります。
さらに、不均一な歯並び(叢生)も適切な食事が困難になる原因となる場合があるでしょう。
歯と歯の間の隙間が大きいすきっ歯(空隙歯列)では、隙間から息が漏れて、話しにくくなったり、話すときにつばが飛んだり、食事中にそしゃく音がきになったりします。
顎のバランスが悪い
整体やマッサージに通っているのに肩こりが解消しないという経験は、多くの人が抱えている問題ですね。長時間のデスクワークによる頭痛も同様です。
実は、顎のバランスが悪いくて肩こりや頭痛に影響を与えることがあります。
噛むときに使う筋肉は、頭を支える役割も果たしています。
顎のバランスが悪いくて、噛み合わせが不適切な場合、筋肉のバランスが乱れ、頭を適切に支えることができなくなるでしょう。
頭の重さは約4〜6キログラムもあります。
本来、噛むときに使う筋肉でしっかりと支えられないと、他の筋肉がその役割を補おうとします。
その結果、姿勢が歪み、特定の箇所に筋肉の緊張が生じることがあるでしょう。
この状態が肩こりの原因となったり、頭部の血液循環を妨げて頭痛を引き起こすこともあります。
顎のバランスの調整や適切な姿勢を意識することで、肩こりや頭痛の改善につながるかもしれません。
虫歯になりやすい人
歯並びが悪いと、歯垢が溜まりやすく、歯周病や虫歯の原因になります。
特に重なった歯をブラッシングするのは大変な作業です。
虫歯を予防するためにも、歯列矯正は非常に重要です。
さらに、歯並びが口臭にも影響を与えることがあります。
なぜなら、歯並びが原因で口呼吸や口をポカンと開けている時間が増えるためです。
口を開けていると、唾液の分泌が低下し、細菌が増加します。
その結果、口臭が強くなることがあります。自分では気づかない場合もあるかもしれません。
実際にビニール袋を口に当てて息を吐いてみると、口臭の具体的なにおいがわかりやすいです。
気になる場合は、定期的にうがいをして口内の清潔を保ちましょう。
歯列矯正の種類と費用
歯列矯正の種類と費用について以下に説明します。
- 部分矯正
- マウスピース矯正
- ワイヤー矯正
- ハーフリンガル矯正
- リンガル矯正
それでは詳しく見ていきましょう。
部分矯正:35万円〜60万円
部分矯正は主に、歯並びの中から特定の歯、例えば前歯のみに焦点を当て、限定的な範囲で歯を動かして整えるアプローチを指します。
メリットとして、矯正に必要な期間や費用を相対的に少なく済ませることが可能になります。
矯正を考える際には全体の歯を対象にした矯正をイメージするかもしれませんが、実際には部位ごとの小さな調整で見た目が大きく改善することも少なくありません。
部分矯正においては、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった、全体矯正で用いられる種類の装置を使用することが可能です。
これは、治療方法の選択肢が広がるのがメリットでしょう。
表側だけでなく裏側や、視覚的に目立たない白色のワイヤーを選択することができ、治療期間や予算に応じて最適な方法を選ぶことが可能です。
装置による費用の違いはあるものの、一般的には裏側矯正が最も高額で、マウスピース矯正が比較的低価格な選択肢となっています。
治療を受ける際の費用は、上下の歯、つまり片顎だけを対象とした部分矯正の場合、両顎を対象とした全体矯正の約半額で対応可能なケースもあります。
クリニックによって料金体系が異なり、歯の本数や治療部位で価格が変動するため、事前の確認が不可欠です。
重要なのは、矯正治療において一見単純に思える部分矯正でも、実際は各個人の歯並びや噛み合わせの状況によって適否が決まるという点です。
例えば、軽度の歯並びのズレや矯正後の微調整などには効果的ですが、骨格の問題や開咬など複雑なケースでは、部分矯正だけでは対応できない場合が多いでしょう。
また、部分矯正を強行してしまうと、見た目にも機能にも悪影響を及ぼすリスクがあるため、歯科医師による丁寧な診断と個別の治療計画のもと、最適な方法を選択することが必要です。
マウスピース矯正:30万円~120万円
最近注目を集めているのは、透明なマウスピースを使用した矯正治療法です。
この治療法は、外から見て目立たないことから、社会人や見た目を気にする人々の間で特に人気です。
従来の金属製のブラケットやワイヤーを用いた矯正治療とは大きく異なり、各患者の歯の形状に合わせて精密に作られた透明なマウスピースを歯にはめ込むことで歯並びを整えていきます。
このマウスピースは、その透明性により外見上の違和感がほとんどなく、食事の際や日常の歯磨きの時には取り外し可能であるため、従来の方法に比べて口腔内衛生が保ちやすくなるというメリットもあります。
矯正中も虫歯や歯周病などのリスクを軽減できるでしょう。
このマウスピース矯正は、歯に直接ワイヤーを使用して力を加える従来の方法よりも力が穏やかであるため、矯正に要する時間が長引くケースがあります。
1日に約20時間はマウスピースを装着しなければならないという条件も、日常生活に制約が生じ、利用者にとってはストレスでしょう。
加えて、マウスピースは完全にオーダーメイドであり、矯正の進行に応じて新しいマウスピースへの交換が必要になることから、治療全体の費用が従来のワイヤー矯正法に比べて高額になります。
ワイヤー矯正:70万円~100万円
ワイヤーを用いた矯正治療は、一般に「表側矯正」として知られており、その名の通り、歯の表面に矯正器具を取り付けます。
歯の表面に小さな装置である「ブラケット」を固定し、それらのブラケットを介して細いワイヤーを通すことで、必要な圧力を歯に加え、徐々に歯の位置を正しい配置へと誘導する矯正治療です。
この工程を通じて、歯並びの不均整を整え、噛み合わせの問題を解消します。
技術の進歩により、利用できるブラケットの種類も増加しています。
従来の金属製ブラケットはその耐久性とコストパフォーマンスの高さから、矯正治療を求める多くの人々にとって第一の選択肢とされてきました。
しかし、見た目に対する意識が高まる現代社会では、さらに目立ちにくい透明性の高いセラミック製やプラスチック製の「審美ブラケット」のニーズが増加しています。
これらの審美ブラケットは、透明感のある素材や歯に近い色合いをしているため、装着していても周囲に気づかれにくいという大きな利点があります。
そのため、社会生活を送りながらでも矯正治療を受けたいと考えるビジネスパーソンや、見た目を気にする学生などにおすすめです。
ただし、これらの審美ブラケットは持つ目立ちにくさの一方、金属製ブラケットに比べると、耐久性が低いと言えるでしょう。
ハーフリンガル矯正:80万円〜130万円
美しい笑顔を手に入れるために、矯正治療は多くの人に選ばれています。
その中で、見た目を極力保ちながら治療を行いたいという願望は非常に強いものです。
特に、社会人になると、人前での印象は大切な要素となります。
矯正治療の方法は様々ですが、その中でも特に目に付きやすい上あごの歯を裏から矯正できる「ハーフリンガル矯正」は、魅力的なオプションです。
ハーフリンガル矯正は、上あご側の歯については目に見えないよう裏側(リンガル側)から矯正を行い、一方で下あご側の歯には外側から見える通常のワイヤー矯正を適用します。
この矯正方法の大きなメリットの一つは、経済的な負担の軽減です。
裏側矯正に比べて、ハーフリンガル矯正は全ての歯を裏側から矯正する必要がないため、治療費を抑えることが可能です。
さらに、口内における痛みや違和感のリスクを、ハーフリンガル矯正は大幅に軽減します。
また全歯を裏側から矯正する際には舌の裏側に装置が固定されるため、口内炎を引き起こしたり、話しにくさや食事の際の不便さを感じる可能性があります。
しかし、ハーフリンガル矯正においては、矯正装置が舌に触れる機会が少ないため、こうした不快感を大きく回避できるのです。
不快感が少ないということは、日々の生活の質に直結します。
矯正装置による食事の際の制限が少なく、また普段通りに話ができるため、治療期間中でも生活の質を落とさずに過ごすことができます。
これは、常にコミュニケーションを取る必要があるビジネスシーンや対人関係において、大きなアドバンテージでしょう。
リンガル矯正:100万円〜150万円
リンガル矯正は一般に裏側矯正とも呼ばれます。
リンガル矯正は、一般的なワイヤー矯正とは異なり、目に見えない形で歯列を整えることが可能です。
リンガル矯正では、歯列矯正で使われるワイヤーやブラケットを、歯の表面ではなく裏側に装着して治療を行います。
従来のワイヤー矯正において、ブラケットやワイヤーが外から見えてしまうことへの抵抗感を持つ人々に対し、リンガル矯正は解決策を提供しています。
この矯正方法は、対人関係において見た目を重視する人々、例えば、サービス業や接客業に従事している人々にとって魅力的です。
これらの職業に就いている人々は、顧客との直接的な接触が頻繁にあり、第一印象が極めて重要であるため、矯正器具が目に見えないリンガル矯正は、彼らの仕事において大きなメリットをもたらします。
一方、リンガル矯正は、異物感や違和感を覚える可能性もあります。
これは、ブラケットやワイヤーが舌の近くに配置されるため、当初は舌が矯正器具に触れることによる不快感を感じることがあるからです。
しかし、多くの患者さんは、時間が経過するにつれて徐々に慣れ、最終的にはそれほど気にならなくなります。
まとめ
「矯正しなければよかった」と後悔しないために、今回は歯科矯正に向いている人、向いていない人を解説しました。
歯の位置や歯並びが悪く、機能上の問題を引き起こしたり、口腔の健康にリスクをもたらしたりする場合には、矯正治療が必要になることがあります。
一方で、歯並びの乱れや機能上の問題、健康への影響がないと判断された場合には、治療が必要ない場合もあります。
歯列矯正によって見た目や口腔機能が改善される場合もありますが、ニーズは人それぞれ異なるため、まず専門医に相談して「自分の状況を正しく把握する」ことが最も重要です。