歯の矯正で昔から用いられているオーソドックスな方法が「ワイヤー矯正」です。
治療症例が豊富で、どんな歯並びにも対応できるのが特徴。
ワイヤーを歯列に沿わせて固定することで、ワイヤーが元に戻ろうと反発する力を利用して歯を動かします。
このワイヤーが歯にしっかりと圧力をかけてくれるので、抜歯後の大きく空いたスペースも難なく動かせるのです。
そんな歯列矯正におけるワイヤーは、色々な種類があるのをご存じでしょうか。
色や素材、太さなどを考慮して矯正の進み具合に合わせて使い分けることが可能です。
今回は歯列矯正で使うワイヤーの種類を解説していきます。
それぞれのメリット・デメリットも併せてご紹介しますので、ワイヤー矯正の参考にしてみてくださいね。
矯正ワイヤーの種類やメリット・デメリットを紹介
まずは矯正で使用するワイヤーにどんな種類があるのかを知っていきましょう。
ワイヤーの種類は主に以下の6種類です。
- メタルワイヤー
- ホワイトワイヤー
- ゴールドワイヤー
- ステンレスワイヤー
- エルジロイワイヤー
- QCM
それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
メタルワイヤー
最も一般的に使われるのがメタルワイヤーで、金属製で丈夫なのが特徴です。
ニッケルチタンワイヤーとも呼ばれており、ヒートアクチベートやβチタンなど細かく金属の種類がわかれています。
メリットは価格が他のワイヤーに比べて安価で、約70万~150万円で治療が完了することが多いでしょう。
ただ、白い歯に銀色のワイヤーを使うので、矯正していることが分かりやすいという点がデメリットとして挙げられます。
なるべく見た目にこだわって矯正をしたいという人には向いていないかもしれません。
ホワイトワイヤー
ホワイトワイヤーは、ロジウムや樹脂で白くコーティングされたワイヤーです。
ホワイトワイヤーの最大のメリットは、歯の色に近い白色のワイヤーなので、矯正していることが目立ちにくいという点です。
見た目を気にする人にはとてもおすすめできますよ。
デメリットは、白いコーティングが摩擦で部分的にはがれてしまうこともありますし、元の歯の色によっては白色がかえって浮いてしまう場合があるという点。
また、通常のメタルワイヤーに比べて価格は約5万~15万円追加でかかります。
メリット・デメリットを考慮して選択したいですね。
ゴールドワイヤー
ゴールドワイヤーは金合金でコーティングしたもので、コーティングがはがれにくいのが特徴です。
ゴールドといってもキラキラした色味ではなく、本来の歯の色になじみやすいのがメリットで、矯正中の見た目が気になる人におすすめです。
ただデメリットとして、ゴールドワイヤーも追加で約10万円必要になるので注意してください。
ステンレスワイヤー
鉄とアルミニウムを合金したワイヤーで、軽くてさびにくい材質が特徴です。
ステンレスワイヤーは力に対して戻ろうとする作用が弱いのがメリットで、矯正の細かい仕上げに用いられることが多いでしょう。
歯科医が治療過程で使用するワイヤーなので、価格はメタルワイヤー矯正と大きく変わりはないかと思います。
エルジロイワイヤー
コバルトクロム合金のワイヤーで、柔らかくてばねの力が強いので痛みが少ないことがメリットのワイヤーです。
治療の細かい仕上げや歯を後ろに動かしたいときに活躍します。
しかしエルジロイワイヤーを扱っている矯正歯科が少ないのがデメリットで、ステンレスワイヤーで代用することが多いです。
こちらも治療段階で用いられるワイヤーのため、追加で料金が必要になることは少ないでしょう。
QCM
QCMとは矯正完了後の後戻りを防ぐために使用するリテーナーという保定装置の一種です。
奥歯部分のみ金属製で、他の正面から見える部分は透明になっているので、装着した際に目立たないのが大きなメリットです。
デメリットは自分で取り外しが可能ですので、装着時間を守らないと歯が元の歯並びに戻ってしまう点。
矯正全体の治療費に最初から含まれていることもあれば、追加で費用がかかる場合もあるので、価格については確認が必要です。
ワイヤー以外の矯正器具の種類
前述したワイヤー以外の矯正器具でよく使われるものをご紹介します。
ブラケット
ワイヤーを歯列に沿わせて通すための装置で、歯の表面に固定されます。
金属製やセラミック製、プラスチック製の材質があり、金属製が最も安価です。
セラミック製とプラスチック製は白色や透明で目立ちにくさが特徴です。
金属アレルギーの人も装着できますし、ホワイトワイヤーと合わせればさらに矯正していることが目立ちにくくなるでしょう。
ブラケットについても選択する材質によっては追加で料金が発生する場合があるので、矯正歯科に確認してみると良いですよ。
ゴム
ブラケットにゴムを引っかけて、歯を上下前後に引っ張る役目をするのがゴムです。
主に噛み合わせを深くしたり前に出た歯を後ろに下げるときに活躍します。
ゴムは自分で着脱することができるのですが、食事や歯磨き以外は常に装着することが必須です。
かける場所によっては目立つこともありますが、装着時間を守らなければ治療が進まなくなってしまいます。
マルチストランド系
複数のワイヤーを編み込んだもので、柔らかくて変形しやすいという特徴があります。
矯正治療の最終段階で、嚙み合わせの仕上げ等を目的に使用されることが多いです。
矯正ワイヤーの太さの種類と違い
矯正に使うワイヤーはインチで表記され、治療の段階によって太さを使い分けています。
ラウンド型のワイヤーを例に挙げるとその太さは5段階です。
ワイヤーの太さ(単位:インチ) |
---|
0.012 |
0.014 |
0.016 |
0.018 |
0.020 |
それぞれの太さに合う治療段階があるので、矯正の進み具合で用いるワイヤーの太さが決まります。
一番太いワイヤーは0.5㎜
最も太いワイヤーは0.020インチで、ミリメートルに置き換えるとその太さは5㎜です。
太いワイヤーは強い力をかけられるので、歯列をしっかりと固定することができます。
ある程度歯並びが揃ってきたら、強い力で歯列を整えるために太いワイヤーへと交換することが多いです。
一番細いワイヤーは最初のステップだけでなく微調整で使われることもある
一番細いワイヤーをミリメートルで表記すると0.254㎜で、例えると髪の毛ぐらいの細さです。
細いワイヤーはよくしなるので、矯正初期のガタガタな歯並びに用いられることが多いでしょう。
ただ、必ずしも初期だけの装着というわけではなく、仕上げの細かい微調整に使うこともあります。
力が強くかかりすぎる太いワイヤーだと、歯を余分に動かしすぎてしまうリスクがあるからです。
治療の経過に適した太さが選択されるのですね。
仕上げのワイヤーは硬いものが多い
歯列矯正の仕上げによく使われるのは、以下のワイヤーです。
- メタルワイヤー
- ステンレスワイヤー
- エルジロイワイヤー
- マルチストランド系
これら4つのワイヤーは硬さがあるのが特徴です。
ワイヤーに硬さがあることで、噛み合わせを調整したり、歯列を後ろに下げるような動かし方に向いています。
歯並び全体を固定しながらしっかりと力をかけられるので、仕上げに使われることが多いです。
矯正ワイヤーの種類は段階的に交換する
矯正に使うワイヤーは太さや素材ごとの特徴の他に、ラウンドやスクエアといった形状まで違いがありその種類は豊富です。
平均的に治療完了まで約2年はかかりますが、その期間の初期・中期・微調整・仕上げという段階でワイヤーを使い分けます。
時期 | ワイヤーの素材 | ワイヤーの太さ | ワイヤーの硬さ | ワイヤーの形状 |
---|---|---|---|---|
初期 | チタン系 | 細い | 柔らかい | ラウンド |
中期 | チタン系またはステンレス | 太い | 硬め | 角またはスクエア |
微調整 | ステンレス | 細い | 硬め | 角またはスクエア |
仕上げ | ステンレス | 細い | 硬め | 角またはスクエア |
こちらの表は治療の流れで変化するワイヤーの一例です。
歯並びの凹凸が大きい初期は柔らかく細いワイヤーで対応し、歯が並んで来たら太いワイヤーで強い力を加えていきます。
必ずしもこの通りというわけではありませんが、ワイヤーの特徴ごとに上手く使い分けているのです。
参考サイト:SHIN矯正歯科
素材や色は装置を付ける前に選ぶ
ワイヤーの種類は矯正を開始する前に選択することが可能です。
主に色と素材を選べるのですが、以下のワイヤーから選べることが多いです。
- メタルワイヤー
- ホワイトワイヤー
- ゴールドワイヤー
メタルワイヤーは最も一般的な金属製の銀色のワイヤーです。
見た目が気になる、金属アレルギーがあるという人はホワイトワイヤーやゴールドワイヤーのような目立ちにくくコーティングされたワイヤーを選択できます。
矯正歯科によって選べるワイヤーのラインナップは異なるので、事前にリサーチしてみると良いですよ。
治療初期は細いラウンドワイヤーが使われる
治療の最初の段階は、歯並びが悪い状態ですので柔らかくしなりやすい細いラウンドワイヤーが使用されます。
太くて硬いワイヤーだと歯のがたつきに合わせて装着することが難しいからです。
治療初期にいきなり強い力をかけると歯が痛む恐れがあるので、最初は細いラウンドワイヤーの優しめのパワーで徐々に動かしていきます。
月1回の頻度で徐々に太いワイヤーに交換する
基本的にワイヤー矯正は月に1回新しいワイヤーに交換します。
歯が並び始めると細いワイヤーから少しずつ太いワイヤーに交換していき、全体に強い圧力をかけて歯並びを整えるのです。
平均5か月でワイヤーは一番太くなる
最も太いワイヤーを装着するタイミングは、治療を開始してから5ヶ月ほどです。
歯のがたつきがある程度治ると、太いワイヤーで強い力を加えて抜歯の隙間を埋めたり、噛み合わせを調整したりします。
一般的に治療の中盤に差し掛かると太いワイヤーでの矯正へ切り替わるでしょう。
最終段階で角ワイヤーやスクエアワイヤーになる
角またはスクエアのワイヤーは、断面が正方形や長方形です。
このワイヤーは歯に強い力をかけることが可能で、治療の終盤に歯の位置調整などで使われます。
微調整でワイヤーの太さを変えたり曲げる
歯並びがほとんど整うと、細かい調整をする段階へ入ります。
この段階でも適したワイヤーの太さを選択して交換しますが、ワイヤーを温めたりしてアーチの広さを変えることも。
ワイヤーの素材や太さで曲がりやすさも異なるので、歯科医は目指したい歯の動きを考慮して最適なワイヤーへ交換します。
矯正ワイヤーの種類別に注意すること
それぞれのワイヤーに特徴がありますが、目立ちにくいようコーティングされているワイヤーには注意点があります。
気を付けて欲しい点をいくつかご紹介します。
ホワイトワイヤーはカレーやキムチなどを食べると着色汚れが目立つ
歯の色に馴染みやすいホワイトワイヤーは、目立ちにくさから希望する人も多いかと思います。
しかし、カレーやキムチ、コーヒーなど着色しやすいものを飲食すると、ワイヤーに色がついてしまうのです。
せっかく目立ちにくいワイヤーにしているのに飲食物の影響で色がついてしまったら残念ですよね。
対策としてはすぐに歯磨きをするか、月1回のワイヤー交換の前日にそういったものを飲食すると良いですよ。
目立たないワイヤーは値段が高い
ホワイトワイヤーやゴールドワイヤーのような目立ちにくいようにコーティングされているワイヤーは追加料金がかかることが多いです。
約5万~15万円が上乗せされる可能性が高いでしょう。
矯正歯科によってその価格設定は異なるので、確認するようにしましょう。
矯正で使われるワイヤーの種類に関するよくある質問
ワイヤーの種類について多く寄せられている質問を調査しました。
それぞれ回答と併せてご紹介していきます。
矯正ワイヤーが一番太くなる時期はいつ?
一般的には治療から5ヶ月経過した時点で、最も太いワイヤーを装着することが多いでしょう。
治療の進行状況によって個々でバラつきはありますが、治療の中期は太いワイヤーがメインで使用されます。
歯列矯正の仕上げに使われるワイヤーの種類は?
太くて硬い材質のワイヤーが仕上げでは使われます。
仕上げの噛み合わせ調整や歯列全体を後ろに下げるような動きに適しています。
ホワイトワイヤーの効果は何?
ホワイトワイヤーは目立ちにくいという理由で選ばれることが多いです。
それ以外の効果として、金属アレルギーがある人でも装着することができます。
ワイヤー矯正のブラケットの厚みはどれくらい?
ワイヤーを固定するブラケットにも様々な種類がありますが、厚さは2㎜前後のものが一般的です。
装着する歯の場所によってはブラケットの種類が変わることもあります。
ニッケルチタンワイヤーの特徴は?
治療の初期に使われることが多いニッケルチタンワイヤーは、「形状記憶」と「超弾性」が大きな特徴です。
ワイヤーがもとに戻ろうとする力が大きく、よくしなるので歯を一列に揃える動きに向いています。
矯正で白いワイヤーを使っている芸能人はいる?
ホワイトワイヤーで矯正している芸能人は多数います。
- 前田敦子さん
- NiziU マコさん
- おぎやはぎ 矢作兼さん
代表で3人名前を挙げましたが、まだまだたくさんの芸能人がホワイトワイヤーで矯正をしているはずです。
ホワイトワイヤーは目立ちにくいので、テレビや雑誌などを通してだと矯正していることがほとんど分かりませんよね。
矯正ワイヤーを曲げる意味はあるの?
ワイヤーをさらに曲げることで、もとの形に戻ろうとする力が発生します。
その力を利用して、歯の位置を調整するのです。
歯の矯正において、ワイヤーを曲げて使用することは一般的におこなわれるので安心してくださいね。
リテーナーのワイヤーの太さは?
歯の後戻りを防ぐリテーナーで使うワイヤーにも種類はあり、その太さは様々です。
ワイヤータイプのリテーナーは歯の表側にワイヤーが来ますし、ある程度の太さがあります。
歯の裏側に固定するフィックスタイプもワイヤーを使用しますが、こちらは細いワイヤーが多いでしょう。
矯正歯科によって取り扱っているリテーナーは異なりますし、歯科医の判断で最適なリテーナーを選択してくれるはずです。
まとめ
- ワイヤーの種類は太さ・素材・形状によってたくさんある
- 治療の段階に合わせて最適なワイヤーへと交換していく
- ワイヤーの色や素材は自分の希望で選べることもある
今回は歯列矯正で使うワイヤーの種類について、それぞれの特徴をご紹介しました。
ワイヤーごとに得意な歯の動かし方があるので、治療段階で使い分けることによって効率の良い矯正がおこなわれているのですね。
歯並びの状態に最適なワイヤーを用いることでトラブルなく矯正が進んでいくようです。
目立ちにくいワイヤーもあるので、見た目が気になる人はそちらも検討してみてください。
ワイヤーの種類は矯正歯科によって取り扱いや価格が異なります。
事前に調べたり歯科医とよく相談してあなたにピッタリのワイヤー矯正を選択し、美しい歯並びを手に入れましょう。